第30章 in the fog 【後編】
ドオォォォ・・・ン……
大きくて鈍い、地響きのような爆発音がした。少し遅れて、部屋の窓ガラスが音をたてて爆風を受ける。
「?!」
二人の視線は、窓の外の同じ建物に向けられた。
高台にある緑色の屋根の屋敷。
そこから、明らかに霧とは異なる黒い煙がもうもうと昇り始めている。
(あの屋敷は、アルビダ達の…)
ローはアルコの肩を押さえて身体を離した。彼女の顔をみることは できなかった。
素早い動きでベッドの上の刀を掴み、乱暴にバルコニーへ出るガラス戸を開ける。
「来るな」
それだけ言い捨てて、ローはバルコニーの柵をためらうことなく乗り越えた。
「───!!」
アルコは柵に身を乗り出して階下を覗きこむ。ローは落下しながら“ROOM”を広げて、着地する前にどこかに消えていった。
「───……」
ひとり残された部屋のバルコニーで、アルコは霧の中で形を変えていく爆煙を見た。
その煙の動きがあるおかげで「時が止まった訳じゃないんだ」と かろうじて思うことができた。
アルコは何が起こったのか整理できず、呼吸をすることも忘れて ただ立ち尽くしていた。