第30章 in the fog 【後編】
「──── てたんだよ」
「……」
「それで、その時にね…」
ロー…、本当にどうしたんだろう
全然 私の話を聞いてない
ローの背中に語りかけていたアルコは不自然に話を途切れさせてみた。それでもローは無反応だった。話を聞いていない証拠だ。
「………」
部屋に沈黙が降りた。
何か重要なことを考えているのかもしれない
邪魔をしない方がいいかな
アルコは自分の分の紅茶を飲み干して、小さな備えつけの水道に歩み寄り、音を立てないようにカップを流し台に置いた。
沈黙とアルコのその動きに反応して、ローは我に返ったようだった。彼も空になった自分のカップを流し台に持ってきた。
「うまかった」
嘘
だって、紅茶だよ?
コーヒーじゃないんだよ?
それに、普通の紅茶じゃないんだよ?
初めて飲むでしょ?
こんな美味しい紅茶
味なんて 本当はわかってなかったんじゃないの
アルコが振り返ると、ローは身体が触れあう程に近い距離にいた。その瞳を恐る恐る見上げて覗き込む。
どうしたんだろう
何があったっていうんだろう
そんな 寂しそうな目をしないで
そんな 辛そうな目をしないで
そんな 悲しそうな目をしないで
だって 私は ────
それなら 私が ────