第29章 in the fog 【前編】
「どうして…、そんなに“素直”になれるの?」
プリンはどこか呆然としている。少し震えているようにもみえた。
「“素直”なんかじゃないよ…。本人の前ではね、どうしても言えないことがある」
感情の裏返し
…とまでは言わないけど
『好き』って言うのが 怖かった
『こんな私』を
受け入れられなかったら…って
傷つく前に 傷つくのを恐れて
「でも、もう決めたの。前に進むって。
自分自身の“コンプレックス”と闘おうって」
目尻を少し潤ませてアルコは微笑んだ。
「“コンプレックス”…」
『みろ! こいつ三つ目だぞ!!』
『うわっ、気持ち悪い~』
『三つ目~! 三つ目の怪物~』
『我が娘ながらに気味が悪いね』
プリンは、魂を抜かれたように立ち尽くしている。プリンのその表情は、再びアルコを驚かせた。
今までの印象とは異なる また新たな表情
まるで“素”の彼女のような
今までの表情は、まるですべてが彼女の“演技”だったとでもいうような ────
「私にも…、いつか『王子様』があらわれるかな……」
「そんなの私には、わからない。無責任なことは言えないよ。でも…」
プリンのその“不安”は
その“弱さ”は
まるで
ローに出会う前の 私みたい
「信じていても、いいんじゃない?」