第29章 in the fog 【前編】
「コレって…、悪い意味のものは無いの? フラれるとか、別れるとか、置いてかれるとか、捨てられるとか…」
「あるわけないでしょ! あなたどんだけネガティブなのっ?!」
“念のため”
お菓子と一緒に想いを伝えるかもしれないことを考えて“念のため”聞いただけなのに
『ハッピーな風習なのか』と安心するのと同時に『あんまりあてにならないかもな』とアルコは思った。
だって実際には、すべての女の子の想いが叶うなんてことはないのだから
「…って、1000以上もあるんだから、私も全部知ってる訳じゃないけどね」
「ポジティブとネガティブは表裏一体ですぞ」
ふぉっふぉっふぉ、とオーナーは髭を触りながら笑う。
アルコは改めてローに似合いそうなアイテムを探した。雑多なテーブルの上に目を滑らせていき、平たいガラスケースに目を留めた。ケースの上半分には指輪が並び、下半分にはコインが並んでいる。金ピカに輝くものから くすんだ銀色のものまで、ピシリと整列していた。
コインか…
ローっぽいかも
しかしコインだけでもいっぱいあるなぁ…
「あまり深く考えずに、直感で…心で決めるのがいいらしいわよ」
「じゃあ…、コレ!」
アルコが指差したコインをケースから取り出したプリンは、オーナーに渡した。オーナーは紙のリストをめくってアイテムの意味を調べ始めた。
「おやおや…、これはこれは」
「え…、コレって…」
「え? なに、なに??」
ビミョーな表情をしている二人に近づき、アルコはリストを覗きこむ。
オーナーのシワのある丸い指先が指していた言葉は
────『忘却』