第29章 in the fog 【前編】
「自由に過ごせばいいんですよ。イルミネーションを見たり、食事をしたり。街も飾られてますから、その辺をぶらぶらしてるだけでロマンティックな雰囲気になりますよ」
「ふ~ん…」
(それをクリスマスと言わずに なんと言うんだろう)
きらびやかな街並み
浮かれた恋人達
そういう行事は自分には到底関係のないことだと思っていたが、その考えを少し思い直す。
ローと一緒なら、そういうのも楽しいかもしれない
ローも、今朝 誘ってくれたし、もしかしたら同じように思ってるのかもしれない
~* 回想 *~
今朝、治療したほほの患部を確認し終えた時
「こないだ見た大きな木の、飾りつけが終わってる」
2週間ぶりにホテルの部屋から外に出るアルコに、ローは視線を合わせることなく、独り言のようにそう つぶやいた。
「そうなんだ。それは楽しみ」
「祭りが始まったら見に行くか…アルコが行きてェなら」
「行きたい。一緒に、行こう」
「夜は まだ、みたことがないんだが…迫力ありそうだ」
“迫力ありそう”
ローはそう表現したが、それは本当は“キレイそう”って意味なんじゃないかな
“素敵”
“幻想的”
“ロマンティック”
二人でみれたら、なんだか“それっぽい”かもなぁ……───
~* 妄想 *~
『キレイだね』
『ああ』
キラキラとカラフルに輝く大きな木を見上げる私達
ひょっとしたら霧に包まれて、そこは二人だけの世界かもしれない
『ねぇ、ロー…。
私、あなたのことが』
『待て、アルコ…』
・・・ギュッ ・・・
『おれはお前のことが』
──── なんて
「キャーっ!!」
「お、お客さま?! 大丈夫ですかっ?」
「あ、スミマセン」
赤くなって髪を振り乱したアルコは、小さな咳払いをして現実に戻った。
(恥ずかし…。アホか、私)
いつからこんな乙女チック思考になってしまったんだろう
『好き』って言うことが
これほどまでに難しいことだなんて
これほどまでにハードルが高いことだなんて
意識すれば するほどに