第29章 in the fog 【前編】
「金なら好きに使っていい。何か欲しいものとか、やりてェことがあれば」
「やりたいこと…」
暇を持て余していたアルコの頭の中には、ローが持ってきてくれた この島の観光ガイドや地図がすっかりインプットされていた。脳内でめくっていた地図は、美容院やエステなどお洒落な店が建ち並んでいる通りのページで止まった。
「そうだ! 髪…、整えてもいい?」
「いいけど…。あまり切るなよ」
「どうして? 長い方が好きなの?」
「…もったいねェだろ」
今のは『長い方が好き』ってことなのかな?
まぁ…、じゃあ切らないけど
『今は』
「なんか、願掛けてんのか」
ローはルフィを目覚めさせた時のことを思い出していた。目覚めと引き換えに髪を切ろうとしていたアルコの行動を。
その髪を大事にしているのか
していないのか
ローにはよくわからない行動だったが、“そんなこと”のために、あの髪を捧げるなんて釣り合わないような気がしてやめさせた。
「いや、別に。願掛けって訳では…。まぁでも、そっか。そうしようかな」
「なんだよ、テキトーだな」
ローの願いが叶いますように
ローが想いを果たせますように
それまでは、ローが切るなって言うんだから、切らないでおこう
アルコは、笑って誤魔化した。
だって軽々しく口に出してしまっては、願掛けにならない気がするから