第29章 in the fog 【前編】
アルコの目から大粒の涙がぼろぼろと こぼれ始めた。
「……──── うー……」
「泣くと思った」
そう言ってローは目を閉じ、両手を広げてベッドに身を預けた。その顔は満足そうに笑っていた。
───── 好き
好きだよ、ロー
そんな優しいあなたが 大好きだよ
しかし、涙が溢れて言葉にならない。
アルコはローにまたがったまま 首もとに丸まって、ついには嗚咽を洩らし始めた。
「苦しい…」
「あ…、ごめ」
いつの間にか、ローの首を絞めるように体重をかけて押さえていた。
アルコは身を起こしローの上から降りて、腕で涙をぬぐう。顔を拭くものを求めて枕元へよつん這いで這っていった。
「泣いとけよ、今のうちに」
アルコの頭をポンッと叩いて、ローはベッドから降りて立ち上がった。「ずびーっ」と音をたてて鼻をかんだアルコはきょとんとした眼差しでローを見る。
「え…。わざと、泣かせた?」
「笑わす方法は…、思いつかなかったからな」
アルコはそれを聞いて、涙を流しながら思いきり笑った。