第29章 in the fog 【前編】
素早く身をよじって逃げようとするアルコの上にまたがって押さえ込み、腕をとらえてベッドに押しつけた。上半身をひねって顔を向けないアルコの耳に、ローは舌をねじ込んだ。
「くっ…、ははっ、こちょばいっ…!」
たまらず正面を向き直ったアルコの首筋から胸元に、ローは今度は顔をぐりぐりと埋めた。
胸の膨らみが始まるあたりに顔を押しつけて服ごと唇でついばみ始めた頃、アルコの身体の力が抜けてきた。ローはアルコが抵抗を止めたことに安心して腕の拘束を解き、胸に顔を埋めたまま、脇腹から腰のあたりに触れる。
「─── !」
ローが油断したその瞬間を狙って、アルコはローの腰に脚を絡め、抱きついたまま横に転がした。
形勢逆転
ローの上に乗ったアルコは、強めに脇腹をつついてくすぐった。
しかしローは余裕のある様子でフッと笑って、アルコのほほを指先でスルリと撫でた。
「気にする気持ちもわからねェ訳じゃねェが…。おれは“珀鉛”さえ取り除ければ ─── “病気”さえ治れば、アザは消えようが残ろうが どっちでもいいと思ってる」
「!!」
その言葉に、くすぐっていたアルコの動きがピタリと止まった。
「アルコが…、自分らしくいられるなら」
ローは片眉を上げ、ニヤリと笑ってアルコを見上げている。しかしその瞳は真っ直ぐで、真剣なものだった。