第29章 in the fog 【前編】
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霧の街を歩く。
石畳で整えられた道には、多くの人や馬車も行き交っていた。
家々や人々の服装は、赤や緑、黄色など原色を使ったカラフルなものが多い。しかし、その鮮やかさは近づいてようやくわかる程度で、それほどまでに深い霧が島全体を覆っていた。まるで霧によって霞(かす)むことを前提に配色されているようだ。
「辛気(しんき)臭ェ 島だな」
「そう? 幻想的じゃない」
前方に何か大きなものの気配を感じた。歩み寄るにつれて、その全貌が明らかになる。
霧の中から現れたのは
大きな 大きな 木
綺麗な円錐形に整えられたその木は、道路の真ん中に堂々とそびえ立っていた。木の周囲を、円形の広めの歩道とロータリーが囲む。
二人はロータリーの外側で 思わず立ち止り、その大木を見上げていた。
これ以上近づくと、木のてっぺんまでは見えないだろう。
これ以上離れても、霧で霞んでハッキリとは見えないだろう。
大木の周りには足場が組まれ、何人かの男達が、木に何かを取りつける作業をしていた。