第29章 in the fog 【前編】
「まぁ、がんばりな。依頼主の金が有り余ってるようなら、あんたらにも仕事を回すように交渉してやってもいいけど」
「ありがとう、アルビダさん」
「お前らが力不足で、おれ達に泣きつく…の間違いだろ」
「ハッ、言うねぇ」
アルビダはローの挑発には乗らず、双眼鏡で島を見ている。
「アルビダ姉さん! 高台の緑色の屋根の屋敷が依頼主の家って話です」
「緑色…。霧が濃くて ここからじゃよくわからないね」
アルビダは数人のクルーを連れて、依頼主の屋敷へ向かうらしい。
ヤギのユキちゃんとアキちゃんに別れの挨拶をしていると、ライオンのリッチーがチョコレートを差し出してきた。アルコはそれを受け取り、リッチーも撫でてあげてから、ローに続いて船を降りた。
「じゃあな! 嬢ちゃん」
「またその楽器、聴かせてくれよ!」
船に待機を命じられたクルー達が、甲板の上から口々に声をかける。
「またねー。私達も、しばらくこの島にいるから」
「世話になったな」
甲板のクルー達へ挨拶を返し、一緒に下船したアルビダにもお礼を告げてから、二人は霧の街へと歩いていった。