第29章 in the fog 【前編】
船はミストリア島に接岸した。
かなり大きな島だ。
島全体が白い霧に包まれているので色彩や賑わいは感じられず、そのため大きな島の割には静かな印象を受けた。ぼんやりと見える島の斜面に沿って文明的な建物が隙間なく建ち並んでいる。
「あんた達はどうするんだい?」
「おれ達は…、準備を整えたらパンクハザードを目指す」
「小型の船 買えるくらい、また お金貯めないとね」
見知らぬ土地や文化に触れて
色々な人達と出会い
価値観に触れる
悪いヤツや嫌なヤツをやっつけたり
宝探しをしたり
そんなワクワクするような冒険もいいけど…
またシャボンディ諸島の時みたいに過ごせるのかな
アルコは、シャボンディ諸島で資金稼ぎをしていた日々を思い出していた。
治療と資金稼ぎのために島に留まった数ヵ月間。
治療の後の 静かなキス
毎朝の朝食
資金稼ぎのために、街中で演奏してまわった日々
シャボンディパークでの約束 ───
あの時の二人きりの生活を通じて、私達の絆は確実に深まった。
二人だけで
静かに 日々を重ねて
どこか期待に浮かれそうになる気持ちを、目を閉じて抑えつける。
私だって 成長してる
強くなってる
力も、技も、『心』も ────
アルコはひそかに決意をしてから、目を開けた。
言うんだ この島で
ちゃんと 伝えるんだ
“それっぽい”時に
───── 『好きだ』って
私の『心』は、きっと大丈夫
だって きっと
ローに『それ』を受け入れてもらえたなら
私は きっと
もっと 強くなれる