第29章 in the fog 【前編】
この船が背負っている不穏さに改めて気づいたアルコは、思わず眉を寄せた。しかしそんなアルコ達を、アルビダは軽く笑い飛ばした。
「戦争なんかじゃないよ。この島は平穏な島だって聞いてる」
「じゃあ、どんな仕事なんですか?」
「用心棒だよ」
「こんな大人数でか。よっぽどの要人だな」
「いいや、ただのビビりさ」
アルビダは「やれやれ」といった あきれ顔でため息をついた。
「なんでも金持ちの息子が、女絡みのトラブルで命を狙われてるんだとかいう話だよ。危険なファミリーの女に手を出したとかで…、その護衛さ。
こんな人数の傭兵を雇うなんざ、よっぽどのビビりか…、金が有り余ってんだろうね」
物騒な話ではあるが アルビダ達の仕事が“護衛”であったことに、アルコは少し安心する。積極的に戦闘や略奪をする訳ではないようだ。
バギー一派(いっぱ)の一部であるこの海賊団で、唯一の女性であるアルビダ。女性でありながら強く、美しく、屈強な男達に対しても物怖(ものお)じすることなく、この船を仕切っていた。
そんな彼女に、アルコは恩や親近感、少しの憧れを感じていた。
マリンフォードからルフィを連れて逃げた時に出会ったハンコックのことを思い出す。
(この海には、強くてカッコいい『女海賊』がいるんだなぁ…)
アルビダは七武海であるバギーの傘下にいるので、現在は賞金首ではないようだ。
悪魔の実の能力者でもあるらしいし…
(私と どっちが強いかな…?)
そんな事を考えているアルコの隣で、ローはアルビダの“ある言葉”が心に引っ掛かっていた。
(“危険なファミリー”…まさかな)