第28章 甘いもの
日が傾きかける直前
船は無人島を出航した。
ローとアルコは甲板のいつもの場所で小さくなっていく ひょうたんの形をした島をみつめていた。
「ローってさ…」
「なんだ」
(私のこと…『好き』なの…?)
私が「パンケーキ食べたい」って言ったのを叶えてくれようとしたんだ
それって 私のために
そんな面倒くさいこと
ただのクルーに対してのものなんだろうか
ただの患者に対してのものなんだろうか
ただの女…に対してのものなんだろうか
「…なんだ」
「ふふっ、なんでもない」
「なんだよ」
大丈夫なんじゃないかな
もしかして
『好き』って言っても
もし、私が
『好き』って言ったら
今みたいにこんな鋭くて怖い(怖くないけど)目じゃなくて
セックスの時とかに
時々向けられる あの優しい眼差しで
ローも『好きだ』って
言い返してくれるんじゃないかって
それってスゴく……
想像しただけで、足りなかったものが満たされていく感じ
アルコは満足そうに 海に向かって笑った。
言えばよかった
昨日の温泉で
聞いてみればよかった
ひとつも流れなかった星の…
時が止まったように煌めいていた
あの星空の下で
「また今度、言う。なんか、それっぽい時に」
「なんだ、それっぽいって」
アルコは返事をせずに笑った。