第28章 甘いもの
「ありがとう、ユキちゃん」
「そっちはアキちゃんだ」
「………」
別にどっちに言った訳でもないのに、リッチーに乗ったモージがツッコんでくる。アルコは改めて『ユキちゃん』の方をなでた。
「おーい、お嬢ちゃん! パンケーキが焼けたよー」
「わぁ~、いい匂い! 甘そう!!」
「おい、料理長! おれ達の分はっ?!」
「ある訳ねぇだろ! お嬢ちゃんとアルビダ姉さんの分だけだ」
料理長はグレーの髭を揺らしながら、キレイに盛り付けされた皿を二つ運んできた。クルー達は慌てて甲板にテーブルと椅子を準備する。
「1週間に1個しか産まないからな、ユキちゃんは」
「そうなんだ、貴重だね。いいのかな? いただいちゃって」
「ああ、食えよ。その代わり! ユキちゃんに感謝しろ。これからも可愛がれよ」
「よかったな、アルコ」
「ありがとう」
アルコはモージとローにお礼を言った。
「ガウ、ガウ~」
リッチーがねだるような甘えた声でアルコにすり寄ってくる。
「嫌だよ、あげない」
「…フガッ?!」
リッチーがお菓子を分けてくれなかったことを根に持っているアルコはヒラリと身をひるがえし、甲板に用意されたテーブルの前に座る。
リッチーが膝まづき、大きな棒つきキャンディをアルコに差し出してきた。アルコはそれを受け取り、パンケーキをひと口切り分けて、その大きな口に運んであげた。
パンケーキには 甘いクリームがたっぷりと、その上にはローが採ってきた赤や紫の何種類かのベリーやヤマモモが乗っている。
屈強な男達の中に
和やかな雰囲気をもたらすのは
卵を産む 世にも不思議でかわいいヤギ
甘いパンケーキに喜ぶ アルビダとアルコ。
船は傾きかけた夕方の日差しに包まれながら、航海を続けていく ────