第28章 甘いもの
頭をつかんでいた口一の手が次第に降りてくる。アルコはキスを止めて、胸の膨らみに触れてくる その手を制した。口一が もたれている石垣に手首を押しつけて動かせないようにする。
「だめ。抵抗しちゃ」
海水の温泉に浸かっていることで力が抜けて抵抗できないようだが、そもそも抵抗する気がないようにもみえる。
二人の両手は、石垣の上に重ね合わせたまま。
手で触れずに柔らかくした唇だけで口一の顔中に触れていく。優しく、置くような丁寧なキスを、ほほからアゴ、首筋にかけて。
口一はこらえるような 溜めた息を 時折吐いて、目を細めて声を出さずに薄く笑っていた。
いつもの鋭さをどこかに置いてきたような柔らかい眼差し。その表情がたまらなく いとおしい。チリチリと燃え上がる やり場のない感情をぶつけるようにアルコは口一の首筋にかぶりついた。海水温泉で少ししょっぱい首から鎖骨にかけて、くわえたままで舌を這わせていくと 口一はピクリと動いて少し身をよじった。
ほんのわずかな反応。言葉も交わさなければ、声すらも出さない。
いつでも冷静で、口数の少ない口一。
そんな彼の心の内を読み取るなんて、長い間一緒にいても なかなか困難なことだった。それでもアルコは、彼のほんの小さな反応にも敏感になっていた。
その時、アルコの察した口一の気持ちは
“嬉しそう”
アルコはかなりの確信を持って、そう感じていた。
だってその証拠に ───
太ももに固いモノがあたる。
海水を含んだ温泉に浸かって力の入っていない身体でも、ソコはちゃんと反応するらしい。
アルコはその事には気づかないフリをしてあげて、いつも深いシワが刻まれることも多い眉の中央に口づけた。