第28章 甘いもの
茂みの下で拾った木の枝を使って髪をまとめた。
暗いので口一の気配を頼りにお湯までたどり着く。足先からそーっと入ると思ったより温かかった。
「あったか~い。気持ちいいね」
「…ぁあ……」
ダレてる。
完っ全に力を抜かれて、ダレた声が聞こえる。
やっぱり苦手なんじゃない
アルコは声を出して笑って、海の方へザブザブと進んでいった。海水が混じっているのか、進むほどにお湯はぬるくなった。
今夜は、月がないから星がキレイ
星の明かりだけで、こんなにあたりを照らすことができるなんて
だだ、星が キレイ
アルコは空一面に張りつき凛と輝く星たちを見上げながら、『あの夜』を思い出して 話題にした。
「口一を担いで泳いだ時、満月だったんだよ。だから『あの夜』は…、月明かりでもっとよく見えた。島も、水面も、口一の ぐったりしてた顔も」
アルコは水面に顔を近づけて笑った。
「アルコがいなかったら、確実に死んでた。助けられたな。…ありがとう」
「あ、いや…。ごめん、そうじゃなくて」
“ありがとう”って言われると、『あの夜』の小屋での出来事を思い出して、恥ずかしくなった。
それに、お礼を言われるために話題にしたんじゃないのに。
アルコは再び『あの夜』の満月を思いだし、話題をそらした。
「パンケーキ食べたい! って思った」
「は?」
「しょっぱいじゃない、海。甘いもの食べたいなぁ~って。すごく黄色くて丸い月だったし。
そう言えばユナの島であんこの入った餅 食べたけどあんまり甘くなかったんだよね。パンケーキ食べたいなぁ…。フルーツと甘~いクリームがたっぷり乗ったヤツ」
「船に砂糖くらいあるだろ。ヤギの乳と…、卵がねェかな」
「そうだね。…それに、リッチーはお菓子 分けてくれないし」
皮肉っぽく言って、また笑った。