第28章 甘いもの
*
その日の 深夜過ぎ
停泊した船
甲板のいつもの場所で、二人は眠っていた。
座ったまま、立て掛けた刀にもたれて目を閉じている口一の隣で、アルコは竪琴を枕に、身体を丸めて横になっていた。
パチリと目を開けて、音をたてないように頭を起こして、あたりを見渡す。
静かな甲板。
ヤギ達も丸まって眠る中、海岸の波の音だけが響いている。
そーっと立ち上がって、口一を見下ろす。
いつものように目深に帽子を被っているので、顔はみえないが眠っているんだろう。
アルコは少し迷ったが、獣が出るかもしれないし、やっぱり竪琴を持っていくことにした。
背中に担いで、忍び足を一歩踏み出したところで ────
「オイ」
ビクリと心臓と一緒に身体が跳ねた。
「…起きてたの」
「ひとりで行くな」
「……(心配性)」
*
島の反対側まで、ひょうたん山の谷を越える。
海に突き当たったところで、海岸沿いをさらに少し歩くと 石垣で整えられた場所に出た。
アルコは船から持ってきたランプを掲げて興奮気味に声をあげる。
「わ~、ホントに温泉だ!」
無人島とはいえ、誰かが温泉に気づき、入れるように整えたのだろう。
岩場の海岸とひとつづきになった温泉で、潮溜まりに湯気が立ち込めている不思議な光景だった。
「海水の…天然温泉だな」
「へぇ~、ホントだ。ちょっとしょっぱい。ぬるめかな」
アルコがお湯に触れた指を舐めている間に、口一が服を脱ぎ始めた。
「…で、なんで口一が脱ぐの」
「なんでって、入るからだろ」
「口一、お風呂苦手でしょ。能力者なんだから。見張っててくれるんじゃないの?」
「しっかり見張ってやるよ」
ニヤリとして、なんだか一緒に入る気満々な感じが漂ってくる。
「………フーッ」
「オイ、消すな」
「消すよ。…恥ずかしいじゃない」
「なんだ、今さら」
ランプを消すと、あたりはすっかり真っ暗になった。
波が岩に当たる周期的な音とは別に、パシャパシャと水音が聞こえる。口一が入ったのだろう。
アルコも服を脱ぎ、大きい岩の横の茂みのふもとに、手探りで服をまとめて竪琴と一緒に置いた。