第7章 鏡
*
ミホークは酒を飲んでいた。
海軍本部であるマリンフォードからほど近い とある島の小さな酒場。一番奥の、店内が見渡せる席で、ひとり盃を傾けていた。
白ひげ海賊団2番隊隊長・火拳のエースの処刑。
その後、起こりうるであろう、白ひげ海賊団と海軍の全面衝突に備えて、七武海として強制召集されたのだ。
政府の狗(いぬ)になるつもりは毛頭ないが、情報と自由が手に入る七武海という安定した地位に、少し物足りなさを感じつつも、ミホークは満足していた。その地位を守るためだ。召集に従うのはやむを得ない。
立場はどうあれ、久しぶりにいい相手と剣を交えることができるかもしれない。鋭い目つきでニヤリとしながら、島の名酒を喉に流し込む。
「“鷹の目”、あんたにだ」
店主が電伝虫を机に置いた。
「………………誰だ」
『おじさま!!? 私!』
「!!!! アルコ…!
…………よく ここがわかったな。長く居城を留守にしていた。すまなかった」
『大丈夫。私なら、大丈夫』
自分に落ち着きを言い聞かせるような言い方に、ミホークはよほどのことがあったのだろうと察したが、冷静に問う。
「どうした」
『………………………………る…って…』
よく聞き取れないのは、電伝虫の念波が悪いせいではないことは、電伝虫がアルコの泣き顔を擬態し始めたことでわかった。
『…なおるん…………だって、私……!!』
*
潜水艦内
リビング 兼 作戦室
アルコは、涙をこらえながら話し始めた。
自分の病状のこと、『トラファルガー・ロー』という海賊のこと、時間はかかるが治療してもらえるということ。
ミホークに心配をかけたくなかったのでオークションで売られたことだけは隠し、今までの航路や旅の経緯を報告した。
『………そうか』
言葉は少ないが、優しい口調の相づちが部屋に響く。
アルコの手元にある電伝虫の“鷹の目”からは、ホロリと一粒だけ涙がこぼれた。
廊下の扉の後ろでは、口をへの字にして震えて泣いているウニをつかんだローが、一瞬にして消えた。