第28章 甘いもの
「20万ベリーか…もう少し必要だな。もっと思い切って賭けろよ。負けねェんだから」
「さすがにバレるでしょ。アレ以上は」
人の散っていった甲板。
アルコは海に向かって、ローは船の縁に背を預けたまま、小声で話し出した。
「私はウソが苦手なんだから、たまには負けるとか挟んでいかないと…。賭け金減らした時、あったでしょ?」
「ああ、確かにそうだな。…アルコの方が策士じゃねェか、それ」
ローはニヤリと笑って、後ろ手で海に何かを投げ捨てた。予備のサイコロだ。
なるほど
私が賭けた後で、手元のものとツボの中のものを、能力で入れ替えていたのか
でも いつの間に…
「“ROOM”張ったの? 気づかなかった」
「そうだろうな。今もここは“ROOM”の中だ」
「え?」
アルコはあたりを見渡す。
全然わからない
もしかして甲板だけじゃなくて、この船全体に…?
「いつの間に?」
「この船に乗ることが決まった時から」
「え。ずっと? 今も??」
「ああ」
こうなることがわかっていたとでも言うのだろうか。あきれたを通り越して尊敬する。
「でも…ずっとなんて、体力使うんじゃないの?」
「これくらいできねェとな。“寺院の時”みたいに、いつ何があるかわからない」
“寺院の時” ────
落とし穴に落ちて、私がケガをした時のことを言っているのだろう
大げさに心配するほどではなかったのだが
ローの横顔を盗み見る。涼しい顔をしているが、その瞳には静かに闘志を燃やすような意志が感じられた。
強くなりたいんだ
私のためって訳じゃない
自分自身の信念のために
アルコはそれを
少し寂しく、少し嬉しく思った。