第28章 甘いもの
「勝負!」
アルビダの声に一瞬 場が静まり返り、ツボが開かれる。
「ピンゾロの丁!」
その口上に、男達の歓喜と落胆の声があがった。
「嬢ちゃん! やるな!!」
貸元の男は、アルコには勝った金を配らずに、代わりに空の手のひらを差し出した。
今のでチャラ、その金で次の賭け札を買えという仕草だ。
「……」
アルコは迷ってはいるが、口の端は上がっていた。次は負けても元の文無しに戻るだけ。ここからは勝てば…
迷っているアルコに、ローは後ろから声をかけた。
「やれよ。大丈夫だ。“おれ達”なら」
アルコは振り返らずに片眉をあげた。
ロー…、なんかイカサマしてる…?
ここで過剰に反応する訳にはいかないので、もう少し迷ったフリをして賭け札を買った。
*
「勝負!! …サブロクの半!」
「嬢ちゃん、女神かっ」
「よし、次はオレも嬢ちゃんにのるぞ」
「…ははっ。なんか怖いくらい ついてますね。こんなとこで運 使い果たして、私、あした死んじゃうのかも」
(ロー…、やり過ぎだよ)
7回連続の負けなしに、アルコは ひきつった笑顔をみせた。8回目の勝負の前に、さすがに待ったがかかり、アルビダが予備のサイコロを準備させる。
「あれっ?! アルビダ姉さん、予備のサイがないッス」
「んな訳ないだろ。どきな!」
座っている男達をどかせて探しても、予備のサイコロは見つからない。負けが込んできた男達からのブーイングがあがり、賭場はお開きになった。
貸元の男が札の換金を始める。
3回目あたりから賭け金を増やしていたので、アルコの手元には20万ベリーがやってきた。
札束を口もとにあてて、細めた目でローを振り返る。ローもアゴを上げて悪どい笑顔を返した。