第28章 甘いもの
にぎやかな甲板。
この船の男達のむさ苦しい雰囲気を和らげているものが いくつかあった。そのひとつが甲板後方に繋がれている2頭のヤギ。
アルコが近づくと、そのうちの1頭が「メェ~~」と鳴いた。
「かわいい。何食べるのかな。紙?」
「さァな…、かわいくても非常食だろ」
「お前ら! なんちゅーことを言うんだっ!?」
大きなライオンの背に乗った着ぐるみのような髪型の男がやってきた。“猛獣使いのモージ”と呼ばれている男だ。アルコはヤギに向けていたものとは対照的な眼差しを男に向けた。
ローも内心同じことを考えていた。
((コイツ……))
(モフモフなのに…)
(かわいくねェな)
たてがみのようなモフモフの髪型のおっさんは、二人にそんなことを思われているとは気づかず、リッチーと呼ばれたライオンから大げさに身をひるがえして降りてくる。リッチーが「ガルルル…」と喉を鳴らしながらヤギに近づくので、アルコはヤギ達を庇うように優しく触れた。
「食べちゃうの?」
「食べるかっ!! リッチーの食事はこっちだ」
モージが指したのは、傍らに置いてあるお菓子の山。大きな棒つきのキャンディやチョコレート、クッキーなどが山積みにされている。お菓子を目前にしたリッチーの表情は、凶暴なライオンから かわいい猫のような甘えたものに変わった。
アルコはそれを見て安心した笑顔をみせる。
「ライオンなのにお菓子が好きなの? 美味しそうだね、ひとつちょうだい」
アルコが足元に転がってきた小さな飴に手を伸ばすと、リッチーは再び牙を剥き、獰猛な声をあげて威嚇してきた。
「わっ!」
「女、気をつけろ。リッチーの機嫌を損ねるなよ」
「……」
アルコを威嚇するリッチーを、ローが静かに威嚇し返したことで、リッチーは少し小さくなってお菓子の山の前にドカリと座った。
「ケチなライオンだな」
「ねー、かわいくない。飼い主に似て」
「「っ?!!」」
モージとリッチーは涙目で振り返った。