第27章 価値観
ローによる島民達の治療が終わったタイミングで、バギーの飲み食いも終わったようだ。
三人は『バギーの右手』を取りに、海岸の小屋へ向かった。
「無事かな…、バギーの右手」
「魚のエサになってるかもな」
「あァ?! そんなことになってたら…てめェら、まとめて たたんでやるからなッ…!!」
小屋は漂着した時と変わらない様子でひっそりとたたずんでいた。中を覗いたバギーは顔を曇らせる。
「ひでェな…、何があったんだ」
「まぁ…」
「いろいろと」
ローの血液と
潰した寄生虫と
吐き捨てた精液と
乾ききった惨事の後を踏み越えて、バギーは吊るされていた右手と再会した。
「ねぇ、ロー。コレ。ちょっとだけ切り出してくれない? お守りにしたい」
小屋の傍らに置かれていた『クウトリワ』の木片を指してお願いした。
船が大破して漂流したが、生き延びられたのはこの木片のおかげだ。コレがなかったら、とてもじゃないけどカナヅチのローを抱えて この島までたどり着くことはできなかっただろう。
ローは能力でサイコロ状に切り出し、木片をアルコに手渡した。アルコは小屋の棚にあった鉄ヤスリで木片をこすり、角を取り始める。
「これを見ろ」
小屋を見渡していたローは、並べて立て掛けてあった銛(もり)を取り上げてアルコに見せた。
どこかで見たようなサイズと形状の銛。ローが指した柄の部分に刻まれた文字を見て、アルコは驚きの声をあげる。
「これってシルバーさんの造った…!?」
グレート・鰤(ブリ)テン島で漁具を造ることを生業にしていたシルバー。あの島と密かに交易があるんだろう。この島では生産したり、直接仕入れたりできそうにない薬や海楼石の錠にしてもそうだ。
「これからは、それをあのまともな僧正が管理するようになるなら…、大丈夫なんじゃねェか?」
「そうだね」