第27章 価値観
──── ズキン
ユナのその言葉に胸が痛んだ。
息を飲む音を悟られないようにすることが やっとだった。いや、目の不自由な彼女は、きっと聴覚など他の感覚が優れているハズだ。気づかれたに違いない。
『“自分が”傷つきたくない』
真っ先に その気持ちが浮かんだ。
その次に浮かんだのが
『“彼女を”傷つかせたくない』
──── なんて 私は
利己的で 自分勝手な 人間
アルコは自分を戒(いまし)めるように唇を噛んだ。
こんな時こそ
なりたい自分でいなければ
「いいも、悪いも。
──── ユナの心はユナのものだよ」
アルコが心を込め直した笑顔を作った直後、彼女が胸元に飛び込んできた。アルコはそれを受け止める。
ごとり、とお茶の碗が倒れて回ったが、幸いもう ほとんど中身は入っていなかった。
「…ありがとう、ございます…」
「どういたしまして」
アルコは小さなため息をついて、ユナのおかっぱ頭を撫でた。
まさかローが彼女の気持ちに応えるとは思わないが…
いや、それは自分が決めつけることではないし、口を出すべきことでもない
──── どうか自由に
アルコは自分を慰めるような気持ちで、胸元の少女を優しく抱きしめ、目を閉じた。