第27章 価値観
破傷風の島民が集められ、ローが順番に治療を行った。
その間、バギーは食事の接待を受け、満足そうだ。
アルコは食事はそこそこに、使わせてもらっていた布張りの家に戻り、ひとり片付けを始めた。
借りていた服と汚れたシーツを洗って干し、ベッドを整える。お風呂を洗い、家具を丁寧に布で拭いていった。
一通り終わらせたところで 開け放していたカーテンの入り口から、ユナが顔を覗かせているのに気がついた。
「アルコさん…」
「ユナ。お母さんの治療は終わった?」
「はい…。ありがとうございました」
「お礼は、ローに」
「はい…」
「………」
それだけ言って、赤い顔を伏せて立ち尽くしている。
「……」
彼女は自分に何か言いたいことがあるのかも知れない。
引っ込み思案で、恥ずかしがり屋だけど、意外と芯の強いところがある、かわいい彼女は。
「座って。私がお茶を淹れるから」
「…はい」
彼女のすべすべの白い手を取って、カラフルな座布団へ誘導し座らせた。もうすっかり味にも慣れた、この島独特の香ばしくて酸っぱいお茶を淹れ、向かい合って二人ですすった。
「どうかな? 上手に淹れれてる?」
「…はい」
どうしたんだろう
モジモジと赤い顔で、返事も上の空だ。アルコは気になったが 無理に聞き出すようなことはせず、静かな口調でお礼と別れを切り出した。
「ユナ、どうもありがとう。見知らぬ私達に、最初から優しくしてくれて。ユナがいなかったら、私達、死んでたかも」
アルコはローから、自分が眠っている間にユナが食料や水を持ってきてくれたとを聞いていた。島外の人間なんて、さぞ怖かったに違いない。それでも彼女は、私達を助けてくれた。そのことに、改めてお礼を言った。
「私達は、そろそろ この島を出ることを考えないと。ローの旅を、前に進めないといけないから」
「……!」
その言葉に、ユナは顔をあげた。
眉を寄せ、赤い顔で、泣きそうな目をしている。
かわいいな…
純粋で、本当にかわいい…
アルコの心のほんわかした暖かい気持ちは、ユナが次に発した一言で、色彩を失った。
「す…、好きに、なっても…いいですか」