第27章 価値観
「わかってたけど……、初対面の人の身体的特徴を指摘するなんて、できないでしょ。何か悲しい事故にあったのかもしれないし…、右手がないことを気にしてるかもしれないじゃない」
(アルコらしいな)
ローはその言い分を聞いて思った。
バギーは涙をちょちょぎらせながら、詰めよっていたアルコから離れた。
……っ
聞いたか、オイ…
なんて人の気持ちを慮(おもんぱか)る優しい女なんだ…
おれの赤っ鼻のこともなんにも言いやしねェ…
それに……
「まぁ…、気にしてるかも知れねェよな」
バギーはアルコのほほにチラッと視線を向けた。アルコは、バギーの視線の先に白いアザがあることを思い出して、手を当ててサッと隠した。
忘れてたけど…
この島にいる間、ずっと顔のアザをさらしていた。この島には鏡もないし、もちろん荷物もなく漂流したので化粧品もなかった。
意外と…
誰もなんにも言わないもんなんだな…
視力が悪いユナはともかく、バギーも、ユナのお父さんも、お母さんも、島の人達も
気にしてるのは自分だけなのかな…
『まぁ、気にするなっていっても、気にするもんは気にするんだから、あんたみたいな繊細な人間は。
それは否定しないのよ』
シャボンディ諸島でドレスショップの店長に言われた言葉。
『気にすることを、否定しない』
店長には、その考え方ともに この片袖の服をもらった。『気にしても いいんだよ』というその言葉に、今までずいぶん励まされていたことに気づく。
アルコは左腕の袖に触れた。
『いいじゃねェか。
別に誰に何を言われても…、おれとアルコがいいんなら、いいのかもな』
ローには この島でそんなことを言われた。
そう言われながら、腕に巻いた白い布を外されたことを思い出した。
すべては、自分次第なのかな…
いつかは…、この服が脱げる日が来るのかな
他人の目を気にせず 傷つかないようになるのが先か
治療で白いアザがなくなるのが先か
アルコは複雑な表情で笑ってから、髪をほほにかけるようにすいた。
それを見たローは、アルコの頭にポンッと手を置いて、ユナの父と治療についての相談を始めた。