第27章 価値観
「なっ…、何てこと…、そんなこと、ローさんにやらせては…! ダメです、ダメです! 絶対、ダメです!! わたし、もう出ます!!」
立ち上がるユナの肩をおさえて、再び浴槽に沈めた。
「いいんだよ。これが私達の『価値観』なんだから。否定しないで」
「……………」
「聞いて」
居心地の悪そうな顔をしているユナに構わず、アルコは上半身は湯に浸からないままに続けた。
「『ユナの身体はユナのもの』って言ったけど、そうじゃない価値観もあるんだよね。ごめんね」
「…………」
「でもね…、世界は広いんだよ。ここだけじゃない。この世界には たくさんの島があって、島の数だけ文化と常識がある。そこに住む人の数だけ価値観があるんだよ」
「…………」
「ユナには見えている“本当のこと”を言えとは言わない。島から出ろとも言わない。それも、自分で決めることだよ」
「…………」
「この島にいるユナにとって、自分の身体は自分だけのものじゃない時もあるかもしれないけど…」
「…………」
「どんな時でも、ユナの“心”は、ユナだけのものだよ」
「…………!!」
「うぇぇ~………ん」
堰を切ったように泣き出したユナ。その振る舞いは、ようやく10代の少女らしくみえた。アルコはそんな彼女の顔を胸に埋めさせるように、頭を優しく抱きしめた。
早朝の冷たい空気が残る中、少女の泣き声が響いた。わぁわぁという声が次第に落ち着いてくる。アルコは、そのおかっぱ頭を優しく撫でた後、大きな くしゃみをひとつした。
「ロー! ぬるいよ、サボってるでしょ」
「…男には 厳しい女だ」
「何か言った?」
「そろそろ出ろよ。寺院に行くんだろ」