第27章 価値観
『──── きれい だ』
涙が溢れた。
布張りのテントの部屋にオレンジ色のランプの灯りが揺れる。ゆらゆらと照らされた、白いアザと黒いタトゥーのある お互いの肌。
『あの時』と同じように、胸に顔を埋めて 彼のその表情や瞳は覗き見ることができない。
でも 『あの時』と違うのは ────
『“嘘”じゃないかもしれない』
“私が”そう思えること
涙が溢れる目元を腕で隠して、言葉を振り絞る。
「…………本、当…?」
「…本当かどうかは、アルコが決めるんだろ」
『……嘘、だ…よ』
『……嘘かどうかは、お前が決めろ。それでいいじゃねェか』
──── ああ
そうだったね
胸がもう一度 ぎゅうっ、と苦しくなった後、その苦しみが鼻に抜けて去っていった。
それと同時に さらに涙が溢れた。
ローは何も変わらない
変わったのは 私
『“嘘”じゃないかもしれない』
そう思えるようになったのは
ローのおかげで
私が変わったから
彼がしてくれるセックスは
この優しい行為や甘い言葉は
まるで 私のための『治療』
私の諦めや自信の無さ、劣等感でがんじがらめになった心の呪縛を、ひとつずつゆっくりと外してくれる
『こんな身体』でも大丈夫だって
セックスという
この行為をもって 理解させてくれる
私のためだけの『心の治療』
「ありがとう」
「…別に。礼を言われることじゃない」
ヘソまで下りていた顔をあげて、目元を拭いていた腕をどけられる。ひたいから鼻先を触れあわせて、強い眼差しを向けられた。
「事実だからな」
「…ありがとう」
ローの少し伸びてきた髭のあるアゴに手を添えて、口づけを受け入れた。