第27章 価値観
*
アルコは外から風呂に回って、置いてあった紙をねじって火を着け、木をくべた。見よう見まねでやってみたので時間がかかったが、なんとか風呂を沸かすことができた。
「もういいだろ。入ってこいよ」
姿は見えないが、風呂の中からローがそう声をかけた。
「でも、これ結構 難しいんだよ」
「テキトーにしとけ」
テキトーって…
直接風呂の底を温めるような装置なので、そのままにすると熱くなり過ぎる。保温状態を保つのは、難しかった。
「放っといたらアッチッチになっちゃうよ」
「アルコも今からすぐ入れば、もう消してもいいだろ」
「わかった、わかった」
ローは自分だけくつろいでいることに居心地が悪いのか。早くしろという口調でアルコにそう促した。
ローが風呂から出てくるのを待って、入れ替りで入る。タオルと着替えの着物を持ってすれ違った。
「今日は ちゃんと、『男』が先」
この島には そういうルールがあるらしいことに皮肉を込めて、アルコは笑顔をみせた。
「ああ、そうだな。先に入らせる訳にはいかない」
「え、ウソ。男尊女卑。何? 影響された?」
「違う。アルコが先に入ったら、おれが風呂に入ってる間に 寝るだろ」
そうだった。
昨日は先に入っていいと言われて、先に入って先に出た。で、ローが出てくる前に寝てしまったのだった。
だって、久しぶりのお風呂で気持ち良すぎた。あのぽかぽか、すべすべの幸福感に抵抗する術(すべ)はない。
「今日は…、寝かさねェ」
「…わかったよ」