第27章 価値観
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使わせてもらっているテントに戻ると、ベッドの上に座らされた。
袴をめくって、傷をみせる。
脛(すね)の広範囲の擦り傷から派手に血が出ているが、傷自体は深くない。縫合も必要ないようで、洗浄され、ユナの父から預かっている薬を塗って丁寧に処置された。
「大したことないな」
アルコは『だから、そう言ったでしょ』という言葉を飲み込んで、ローに礼を言った。
ふと、気配を感じてテントの入り口をみると布から小さな頭が覗いていた。
子供だ。
褐色の肌をした男の子が、ローが処置をする様子を真剣な目で覗いていた。
「おれの姉ちゃんを、治してくれよ」
(あの時の野次馬のガキか…)
ローはその子供に見覚えがあった。
海辺の小屋で寝ているところを起こされた子供のうちの一人だ。その後ガキ達に『僧正様』に通報された。牢に入れられてからも、牢から出る時も野次馬のように周囲にいた子供だった。
「ちょっと…診てくる」
ローは刀を取って立ち上がった。
「うん。もちろん、行って。
ユナのお父さんも気になるけど…。穏便にしたいよね、できるだけ」
「“穏便に”な」
ローは皮肉を込めてアルコの言葉を反復した。わからずやのジジィ達に派手に啖呵を切ってたのに、よく言う。
「そうだな。確認するだけ…、手遅れになったら意味がない」
「うん。いってらっしゃい」
ローの背中を頼もし気に見送った。
さすが、ロー
“宝”のためと言いつつ、本当は困っている人を放って置けないんだ
(…………よし)
アルコはベッドから降りて袴と足元を整えた。外を覗いてローがすっかり見えなくなったことを確認してから、早足でテントを後にした。