第27章 価値観
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残された二人は正面の石段を登り、入り口に戻った。しかし、先ほどとは違う入り口の様子に戸惑った。
先ほどはポッカリと暗闇の四角い口を開けていた入り口には、石の扉がピッタリと閉じられていて、押してもピクリとも動かない。
「閉まってるな」
「斬る?」
大剣を抜いて構えたが、ローはアルコのその剣の構え方に違和感を感じた。おもむろにその場にしゃがみこみ、朱色の袴の破れた部分をバサリとめくる。
「ちょっと…、何してんの?!」
「アルコ…、お前、足ケガしてるじゃねェか」
「そう? ああ、ホントだ。でも大丈夫。大したことないよ」
「…ダメだ。戻る」
「大丈夫だよ! 今はそれより…」
「ダメだ」
落とし穴から落ちた時か。
暗闇だったし、わからなかった。というか あえて確認しなかった。ローに心配かけると思ったから。もし血が出ていたとしても、朱色の袴に紛れてわからないだろう。
と、思っていたのに。
「…………」
突然、視界がぐるりとした。
ローに腹を抱え上げられて、肩に担がれる。
「降ろして! 歩ける」
「………ダメだ」
ローは勢いよく石段を駆け下りて、怒ったようにズカズカと森を歩く。
アルコはローの肩の上で少し抵抗したが、無駄とわかり すぐに大人しくした。抱えられたまま、ローの背中と流れていく森の風景を見ながら徐々に頭も冷えて冷静になっていく。
自分の病気 ────“珀鉛病”
厄介なのは“珀鉛”の毒性だけでなく、“珀鉛”に対して起こる自分の身体の過剰なアレルギー反応。強すぎる自己防衛反応のせいで、ケガに対する反応も高過ぎて、きちんと休まないと熱を出すって。ずいぶん前からそう説明されていた。
「ごめんなさい」
アルコの その言葉にローは立ち止まって、能力で横抱きに抱え直した。肩に担いでいたのを、胸元で抱きかかえるように。
「ごめんなさい」
近い距離でローの顔をみながら、もう一度言った。
「…いや、もっと慎重に着地するべきだった。…気づかなくて悪かった」
アルコは首を横に振った。
「…ありがとう、ロー」
「つかまってろ」
森を抜けて、村まではもう少し。
アルコはローの首を抱きしめるように つかまった。