第27章 価値観
ひんやりとした空気が漂う通路は、薄明かりに照らされていた。
光源は、左右の柱にひとつずつ埋め込まれた石。おかげで柱のひとつひとつが ぼんやりと黄緑色に光っている。その光る石に触ってみるが冷たく、他の石と触り心地は同じだった。
「不思議な石だね」
「蓄光石か…。誰かが明かりを持ってここを通ったな」
ローは柱の裏側を丹念に触って調べているようだ。左右に5本ずつ並んだ柱が先の空間へと誘導しているが、ローはそちらへ足を向ける様子はない。
「進まないの? ココが怪しい?」
「ああ。“いかにも”な場所は後回しだ」
「アルコは宝探し初心者だったな」と言うローの顔はきっと得意気なんだろう。柱の後ろ側にいるので石の灯りが届かず、その顔を確認することはできないが。
アルコもローに倣(なら)って、柱の後ろにまわり凹凸を触り始めた。大小様々な石が埋め込まれ、固められている。
「違和感のある形や色を見分けろ」
「う~ん…」
形はともかく色なんて暗くてわからない。灯りを持って出直した方がいいんじゃないか。
「“宝”がもし…悪魔の実だったら、アルコはどうする」
「どうするって、…食べろって言うの?!」
「食いてェか?」
冗談じゃない。それに…
「食べられる訳ないでしょ。ローが溺れたら、誰が助けんの」
「そう言ってくれると思ったよ」
「考えられないね。とくに二人旅のうちはね」
「そうだな。アイツらと合流したら…」
「────ッ! シッ」
入り口の方から足音と揺らぐ灯りが近づく気配がして、アルコが会話を遮った。二人は、それぞれの柱に身を隠す。
人数は ひとりのようだ。
松明(たいまつ)を持っているようでオレンジ色の揺らぐ灯りが、柱の影を伸ばす。その影を追いかけるように二人は丸い柱に背を預けてやり過ごした。
その人物が迷いなく奥の空間へ進んで行った気配を見届けてから、二人は蓄光石の灯りが強くなった空間で目配せをして、気配と足音を殺したまま、その人物の後に続いた。