第27章 価値観
*
チャパ………
「…………ふ~………」
「お湯加減は どうですか?」
「ああ、ユナ? そこにいるの? すっっごく気持ちいいよ」
「アルコさん?? わたしは てっきり…」
「ごめんね、ローかと思った? 先に入っていいって…」
「え…、先に?? そんなことが…」
「ヘンかな」
「………」
ヘンなのか。
黙らせてしまった。
『信仰』が厳格に支配しているこの島は、男尊女卑の思想が当たり前のように浸透しているんだろうとアルコは察した。
お茶を入れたり、男の言葉を否定せず従ったり、男の話や行動を遮らないようにしたり、控えめな行動を心がけているつもりだった。
ローはまだ少し薬の分析をするから、と先に入らせてくれたのだが…
まさか男より先に風呂に入ってはいけないとは。そこまでは気が回らなかった。
しかし入ってしまったものは、しょうがない。
アルコは言い訳するのもやめて、口元までお湯に浸かって温かさと幸福感と浮遊感を味わった。洗い終わってまとめた髪に夜風が涼しい。
「オイ、入るぞ」
「わっ?! まだ入ってるよ!」
「わかってる…別にいいだろ」
バシャ……バシャッ
ローはお湯を身体にかけながら、布で身体を擦(こす)り始めた。
「ダメ、やめて。ユナがそこにいる」
「どこだ」
「外でお湯をね、温めてくれてる」
「見えねェだろ」
「見えなくても!! もう出るね」
アルコはさっさと身体を拭いて、寝間着のような白い着物を着た。膝丈ほどのその服は、胸元であわせて紐で結んで留めるものだった。
あああ…! サッパリ!!
最っ高!
気持ちいいいいい……
久しぶりのお風呂に、身も心も洗われた気分だ。
外に回って、風呂の暖装置にしゃがみこんでいるユナに声をかけた。
「ありがとう、ユナ。本当に気持ちよかった! 部屋で お茶でも飲まない?」
「あ………」
アルコに気づいたユナは、顔を真っ赤にして、逃げるように走り去っていった。