第27章 価値観
「…失礼します。お風呂が沸きました」
「ユナ。ご苦労」
ユナが入り口から顔を覗かせた。彼女は風呂の暖装置に外から薪をくべていたようだ。父は娘に労いをかけた。
「お父様…いらしてたんですか」
「もう行くよ。では、君達ゆっくりしてくれ。治療の件はまた後日。ユナ、後は頼むよ」
ユナの父は様々な薬をそのまま置いて出ていった。ユナも「順番にどうぞ」と言って外へ出ていった。
二人きりになった部屋でアルコはローに気になっていたことを問いかけた。
「ローにしては珍しく…えらい協力的だね」
「ああ。まぁな」
「気になるの? “医者”として放っておけないか」
「いや…、別にそういう訳じゃねェ」
取りあげて眺めていた薬のひとつを、並べられたものの中にぽいっと放った。
「金(かね)がない」
「え? ああ、そうだね。私達、一文無しで…」
「そうじゃねェ。この島には『ベリー』が流通していない」
「そう…なんだ」
知らなかった。
確かに独自の文化を築いているようではあったが、『お金』がないなんて。
ローは自分が寝ている間に、島内をみてきたのだろう。
先ほどユナの家で分けてもらった食べ物も、質素なものだった。檻の中で食べていたものとさして変わらない。
服装も皆、同じような格好。『贅沢品』というものがないのかもしれない。彼らの『信仰』とも関わりがあるように思った。
『治療』…をするかどうかはわからないが、ユナの父に協力することで当面の衣食住はなんとかなりそうだとは言え、『ベリー』が貰えないなら いくら治療しても今後の旅の資金稼ぎにはならないということだ。