第27章 価値観
もし、この愛器が海の底に沈んでしまっていたら…
アルコはそう考えると恐ろしくなった。
ローと一緒にいたい。でも自分は“この子”を置いては、そう簡単に前に進めない気がした。どうにか探して海底から引き揚げるために、この場所に留まろうと考えるかもしれない。
それほどに大切なものだ。
ローも同じような眼差しで、自分の愛刀を手入れしている。きっと、自分の愛器に対する この気持ちを理解してくれるだろう。そう思うとまるで同志のような気がして、嬉しかった。
「妖刀だ」
アルコの視線に気づいたローは、柄と刀の境目部分を丁寧に拭きながら言った。
「そうなんだ。…キレイだね」
「女にもらった…、って言ったら妬くか?」
ニヤリと笑みを向けてくるので、アルコは驚いて目を開いた。でもすぐに その目を細めて弦を一本一本こすりあげる作業に戻る。
「別に。道理で、キレイなもんだね」
明らかに妬いてることを隠しているアルコをみて、ローは満足そうに少し笑ってから、また語り始める。刀の名前や、由来、手に入れた経緯…。
順番だとせがまれて、アルコも“この子”を与えられた経緯や共に過ごした日々を語り出す。
二人は静かに、お互いの愛刀をねぎらい、尊敬し、睦んだ。