第27章 価値観
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「少し目を離すと すぐ寝るんだな、アルコは」
目を開けて起きあがると、ローは床に座って刀の手入れをしていた。アルコの竪琴と服も置いてある。
「ごめん、寝てた? なんか気持ちよくって」
「ああ。気持ちよさそうだった」
アルコは伸びをして顔を洗った。洗面室は木の庇(ひさし)がついているだけで壁と屋根のスキマが開いていた。空は夕焼けのようだった。
「小屋に行ったの? 取ってきてくれたんだ」
「ああ」
命より…、いや、命の次に大切なお互いの刀と剣。
船が大破したあの時、とっさの出来事だったけれど、お互い自分のそれぞれの武器を握りしめていた。それを空中で、ローは自分の身体に縛りつけてくれた。
自分達の命が…なによりローの命が助かったから、武器が無事でよかったと思える。そう考えると やはり『命より大切』なのではなく、『命の次に大切』と言えるだろう。
『命より大切』なんて言うヤツは、きっといっぺんも死にかけたことのないヤツだ。
アルコはローの隣に座って、竪琴の手入れを始めた。
剣を抜き、弦を外し、水で濡らした布と乾いた布を用意して丁寧に拭いていく。