第27章 価値観
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三人は運ばれてきた平たい餅を、並んで座って食べていた。
アルコはてるてる坊主のように白い布を身体に巻きつけ、アザのない右腕だけを外に出すように胸元で縛った。バギーは鎖で繋がれた左手だけを使って、食べにくそうにしている。
「味気ねェ食事だろ? こればっかりだぜ」
「でも、美味しいよ。こっちは あんこ入ってた。なんかあんまり甘くないけど」
「何ィっ?!! よこせ!! 女っ」
「やめろ、自分で探せ」
バギーはガシャガシャと鎖を鳴らしながら残った餅を次々と口に入れるが、あんこの入ったものは みつからなかったらしい。
“当たり”はひとつだけだったのか。
「…むッ…、ぐぅっ…」
そのうちバギーは苦しそうに胸を叩き始めた。
「忙しいヤツだな……」
「ロー、取ってあげてよ。能力で」
「無理だ」
そう言って手首にはめられた錠を掲げる。
海楼石の手錠。
『海と同じエネルギーを発する』鉱物で出来ており、能力者を無力化する海軍ご用達のアイテムだ。
赤い顔を通り越して青ざめていくバギーをみて「大変っ!」とアルコはバンバンと背中を叩いた。
(放っときゃいいのに…、相変わらず親切すぎる)
しかしローは、アルコの親切が巡って自身に返ってくることを実感したばかりだった。
「どうしよう! 取れないよ!!」
ローはため息をついてから、手錠のはめられた手をバギーの身体に回し、後ろから抱きしめるような格好で、腹部を突き上げた。
「ぐっ………、がはっ! げほっ、げほっ…」
「はぁ~、よかった。ありがとう、ロー」
呼吸を始めたバギーをみて、アルコは安心しローに礼を言った。