第27章 価値観
「あり得ねェ…」
ローは思わずそうつぶやいた。
ベポ達とシャボンディ諸島で別れて半年ほど経つ。あいつらも潜水艦で“新世界”に入っているハズではあるが…。
偶然にもこの島に来ているというのか。しかもこの面倒そうなヤツらに捕まっているというのか。
そんな偶然が、あり得るというのか。いや、あり得ない。しかし断言はできない。ひょっとすると…。
困惑するローに構わず、男達が小屋に入ってくる。男のひとりは海楼石の錠を持っていた。
「大僧正様の“宝”をしつこく狙う意地汚い海賊め。貴様はハレンチ罪で仲間のもとに送ってやる!」
(“宝”……?)
ベポ達がこの島の宝を狙っているのか? 少し違和感を感じたが、何か事情があるのだろう。
二人の男がアルコに触れようとするので、ローは能力で刀を手元に取り寄せて、ひとりの男の喉元に当てた。
「触るな」
「うっ………」
「貴様っ! 仲間がどうなってもいいのか?!」
卑劣なヤツらめ。
こんなヤツら一瞬でバラバラにしてやれるのに。
「…わかった。仲間に会わせろ。抵抗はしない。…しかし、この女は能力者じゃない。手を出すな、おれが運ぶ。それが抵抗しない条件だ」
「女…、死んでるのか」
「いや、寝てるだけだ」
「なぜ起きないっ?!」
「……そういう“体質”だ」
老人は舌打ちしてから、錠をかけろと男に命令した。ローは持っていた刀とアルコの竪琴を、能力で部屋の片隅に隠すように移動させた。男達に一瞬 不審な目を向けられるが、それをごまかすようにローは男達に両腕を差し出した。
かろうじて肩幅ほどに両手を開くことができる鎖で繋がれた。
ローはアルコを布ごと横抱きのまま すくい上げ、胸元で抱きかかえた。
男達に先導されて小屋を後にする際、ユナと呼ばれていた少女をチラリとみた。
少女は焦点の合わない瞳で、ローに抱かれたアルコを食い入るようにみつめていた。
「おい、何か履け!」
後ろから銃剣で尻をチクリと刺され、ローは小さく飛び上がった。
アルコを一旦置いて、屋根に干していた下着を履く。下着すら完全に乾いていないので、ズボンはまだまだだろう。
ローは下着姿のまま再びアルコを抱えて、男達に銃剣を向けられたまま、海岸沿いを歩いていった。