第27章 価値観
夕方の砂浜
ひとの気配はない。
グレート・鰤(ブリ)テン島に似た、過ごしやすい気候の島であることに感謝した。
(森に入って水を探すか…)
しかし もう夕暮れで、鬱蒼(うっそう)とした森は一足早く闇を携えていた。
シーシーと虫の声が響き、不気味な感じがする。
建物らしいものは小屋以外に見当たらないが、先ほどの女はそう遠くから来たのではないような気がした。
ということはこの森の奥だろうか。
森に入るのは人に会う準備と覚悟を整えてからのほうがいいだろう。アルコを裸のまま、小屋に残していく訳にもいかない。
ローはとりあえず、波打ち際で下着を脱いで、すべての服を海で洗った。
とくにアルコの片袖の服は血を落としつつも、破れないように丁寧に洗った。
それぞれの服を固く絞っていると、自分のズボンのポケットに何か入っていることに気づいた。
出てきたのは、珀鉛を閉じ込めたスクリュー管。船上で治療をやめた時に、無意識にポケットに入れたものだった。
(これだけでも…、無事でよかった)
荷物はすべて船と一緒に海の底だ。手元にあるのはそれぞれの愛刀とローの帽子、それと身につけていた服や靴。アルコのハートのネックレスくらい。ローにいたっては上着もなかった。
ローは小瓶の中の珀鉛を夕日にかざしてから、再びズボンのポケットの奥に入れた。