第27章 価値観
床に落ちている入り口の長方形の日光に、影が動いた。
能力を使うことに集中していたので気づかなかった。
刀を握りしめ顔をあげると、ほほのあたりで髪を切り揃えた女が顔を覗かせていた。
「…あ……」
女は驚いているのか、焦点の定まらない見開いた目で こちらを見ている。
「怪しいものじゃない」
ローはとっさにそうは言ったが、全然説得力がないな、と自分でも思った。
血だらけの小屋に、裸の男女。
いつから見られていたのか。理由はどうあれ、自分はさっきまで女の身体を刻んでいた。
「船が壊れて、漂着した。食料と……水をくれないか」
言い訳はめんどうだ。それよりも、端的に要求を伝えてみた。
しかし女は案の定、隠れるように走り去っていった。
入り口には、しっぽのように女の服の一部らしきものがふわりと浮かんでから、すぐにみえなくなった。
藍色と桃色のグラデーションのような布の色彩が、妙に頭に残った。
(アルコなら…、上手くやっただろうか)
裸のアルコに、布団代わりにしていた漁網をかけながら、ローは自分の人相の悪さを呪った。
アルコの裸を……
“白いアザ”の散らばる肌をみられただろうか
アルコが珀鉛病であることが、さっきの女に知られたかもしれない
自分に殺人疑惑がかけられたかもしれない
様々な不安要素はあるが、とりあえずこのままでは出歩くこともできない。
ローは渋々 濡れた下着を身につけ、自分のズボンとアルコの服を洗うために、小屋の外に出た。