第27章 価値観
足元に暖かさを感じて、ローは目を覚ました。
扉のない小屋の入り口から差した長方形の日光が、自分の足を照らしていた。
(もう 夕方か…、ずいぶん寝たな)
日が傾いているようだ。
アルコは自分の上で体勢を変えずに、すやすやと眠っている。
その冷たい身体を丁寧に横たえて、ローは刀を引き寄せてスラリと抜いた。鞘から海水がボタボタとこぼれ、ローは眉をひそめる。
“ROOM”を広げてアルコの身体を刻んだ。太ももの一部を持ち上げて“スキャン”してみるが、寄生虫の卵らしきものは みつからない。
それよりも“珀鉛”が目につき気になったが、島の状況もわからない今は治療をしている余裕はない。
『せめて……今は治療はやめたほうがいい』
『ローには、どうすることもできない。アルコの力が必要になるから』
アイビーの助言にしたがって、船上で治療をしなかったことを思い出す。
アイツには、船が大破し漂流することがわかっていたんだ
確かに、大海原に放り出された能力者の自分にはどうすることもできなかった
直前にアルコの治療をしていたら、彼女は熱を出していたかもしれない
命懸けの遠泳だったに違いない
治療しなくて正解だったな
この困難をアルコだけでなく、アイビーやシルバー、ディンのおかげで乗りきれたことに、ローは感謝した。
(人に親切にしときゃ… 自分にいい事があるもんだ)
彼らに親切にしたのは おもにアルコだったが、その恩恵にあやかったことで、ローはその事を実感した。
とは言え、次は寄生虫の処置をしなければ。
寄生されたのは自分だから、卵が産みつけられ、増殖しているとしたら自分の方が進行しているだろう。
そう思い直したローは、自分の足を切り離して“スキャン”した。
(………またオスか、幸運だな)
念のため、自分もアルコもいくつかの部位を“スキャン”して確認したが、寄生虫の卵はみつからなかった。