第26章 漂流
明け方前
夜の闇が もっとも深い時間帯
砂浜の先には、鬱蒼(うっそう)とした森が広がっている。みたところ人の気配や街明かりは見当たらないが、森との境い目に古びた小屋をみつけた。
(小屋があるってことは、無人島ではないのかな。とりあえず………ここで)
扉の無い小屋の入り口
中を覗くと、網や壺、銛などの漁具が置かれていた。いや、置かれているというよりは、放置されているといった印象だ。
(ここなら、大丈夫そう)
とりあえず、休みたい。
いきなり人気(ひとけ)の多いところに行ったり、他人に事情を説明するのは骨がおれる。
小屋の道具はあまり使用された形跡がないことから、日が昇っても ここが人に見つかりにくい場所である可能性が高い。都合のいい解釈だが、アルコはとりあえずそう思うことにして、安堵の息をついた。
物を足で雑に除けて、ローを寝かせる。
つかまらせるためにロンググローブで固定していた手首や、ロープでくくりつけていた竪琴と刀を外し、木片のそばに置いた。竪琴にひっかけていたローの帽子も外して、海水を絞ってから木片の上に干した。
徐々に暗闇に目が慣れてきた。ローの裸の上半身にはロープの跡が食い込んでいるようだった。その身体の凹みをなぞって、声をかける。
「ロー! 大丈夫? 島に着いたよ。どこか痛いとことかない?」
とりあえず、息はしている
私も休んでも大丈夫かな
色々考えるのは、とりあえず明るくなってからでも大丈夫かな
このままバタンといってしまいたい
アルコがそう思った時
──── ビクンッッ!!!
ローの身体が大きく一度 痙攣した。
それを見て、アルコの心拍数が一気に上がり、眠気と疲れが吹き飛んだ。
「ぅぅう………、ぐっ………!!」
「どうしたの…!? 大丈夫っ?」
とは言え、自分は医者ではない。
何がどうしたのか。異常があるのか。どこか痛いところがあるのか。何かしなければならないのか。
頬をペチペチと叩くが、うめき声をあげながら ぐったりとしていて反応がない。