第26章 漂流
「ぷはぁっ、はぁっ…、ぅう、はっ……、
ロー、こっちに…、つかまれないの?」
「げほっ、げほっ、………い…」
「お願い! ローってば」
「………ム、リだ…」
ムリか………
ムリならしょうがないんだけど…
「…アルコ………」
背中でローが何かを つぶやいている。
その声は、力がまったくないが何かを言おうとしていることはわかった。
「どうしたの? ごめんね、落としちゃって。もう大丈夫だから……」
「アルコ……、…ぃい」
「え?」
「アルコに、つかまって…ぃたい……」
「いや、でも背中だと…」
「死ぬなら、ココで………」
アルコは ひとつ息をついて、ローの説得をあきらめた。
しょうがないなぁ
弱ってて甘えん坊になってる
大丈夫
死なせないよ……って言いたいけど
ローだけ木片に乗せるほうが
泳いでいける確率は高そうなんだけど
でも、さっきみたいに落としちゃって
もしローだけ沈んじゃったら
私は ひとりぼっちの この大海原で
──── どうやって死のうかって
考えちゃうだろうな
そうだね
ローがその気なら
死ぬなら
ココで一緒に
アルコは泳ぎながら右袖のグローブを外し、首もとでクロスされているローの両手首を縛って固定した。
「わかった。つかまってて。
このまま、一緒に行こうね」
子供をなだめる母親のような言い方に、ローは安心して再び気を失った。
柔らかく
あたたかく
もっとも信頼する
“いとおしい”女の背中で
その肩に抱きついたまま、ローはその重い身体と命を完全に預けた。