第26章 漂流
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“海”は
時に荒々しく、禍いをもたらす
しかし、それすらも欠けがえのない
いとおしいもの
* *
「……ー、……ロ………、…ロー!!」
ローは意識を取り戻したが、身体にはいまだに力が入らなかった。
ただ、情けなくしがみついているだけだ。求めているものは“柔らかさ”と“あたたかさ”。『生きたい』と思うことより、それを求めるほうが力が出る気がした。目の前にある、柔らかく、あたたかい女。
もう結果など どうでもいい
おれは、この女に命を預けると決めたのだから
アルコは 上半身を木片に乗り上げたままグリグリと左右に身体を動かして、背中のローを揺さぶった。ぐったりとしているが目を開けたらしく、振り返り近い距離で声をかける。
「ロー、こっちにつかまれる?」
「………う…」
時折 頭から波をかぶるし、足は海水に浸かったまま。しかしローは目を開けて、状況を把握した。
(これは…『クウトリワ』の木片)
1m角ほどの大きさがあるそれは、『クウイゴス』とは違って能力者を浮かすのには十分とは言いがたいが、それでも心強いものだった。
「今度はこっちにつかまって。私がコレを泳いで押すから」
「………いや、…あぁ……」
ローの返事は、あまり前向きなものではなかった。しかしアルコも、すでに何時間かはローを背負ったままの体勢で泳ぎ続けていて、なかなか限界だ。少し体勢を変えて、体力を回復したかった。
狭い木片の上で、少しずつ横向きになり、ローを背中から下ろす。ローが転がり落ちないようにズボンの後ろのベルト部分をつかまえたまま、自分は木片から下りて、肩まで海水に浸かった。