第26章 漂流
能力を使った瞬間移動を何度か繰り返すと、船はワニの軒下から離れていった。
(恐っ………!!)
ゴツゴツした巨体
凶暴そうな鋭い目
かわいいワニだったら、ここまで運んでもらったことにお礼を言って手でも振ろうと思っていたのに、とてもそんな雰囲気ではない。
無意識のうちに竪琴を抱きしめて、見つからないように、船の屋根に身を潜めた。
あのワニの下でくつろいでいたなんて
いざとなったら闘って…、なんて思っていたなんて
ワニの全貌が見える距離まで遠ざかると、アルコは改めて無謀さと恐ろしさで震え上がった。
「ここまで来れば、大丈夫だろ」
「そうだね、ご苦労さま」
・・ブンッ・・!!
………………ザッ・・・ブン……
ワニは来た方向に振り返り、ゆっくりと泳ぎだして行った。
ワニの進んでいく方向には、黒い雨雲がかかっていて、いまだに大雨が降っているようだ。
水面に低い体勢で泳ぎ始めたワニは、波によって見え隠れするようになった。
「バイバ ─────」
「ッッ ──────?!」
気を抜いたアルコが小さく別れを言った時、波に紛れてワニの方向から迫ってきたのは、深緑色のゴツゴツした“何か”。
高速のドミノ倒しのように近づいてくる。
“それ”がワニのしっぽだと気づいた時には すでに遅く、鞭のようにしなって船を打ちつけた。
バキィッッッッ!!!!
「!!!?!!!」
一瞬の出来事に、何が起こったかわからず目を丸くして、竪琴をさらに強く抱えたまま身を固めた。
浮遊感
アルコはローの腕の中に抱きかかえられて、上空から粉々になった船を見下ろしていた。
ローが抱えて飛び上がってくれたんだ
でも、もうすぐ最高点に達する
そうなったら落ちるだけ
どうしよう
どうしよう
どうすんの