第26章 漂流
「治療はしない、今は」
「そうだね。そんなに痛くないから、大丈夫。したらまた寝込んじゃうかもだし」
「まあでも…、アルコは出来るだけ休め。船のことは、おれがなんとかする」
「なんとかって………どうやって」
「心配するな。
とりあえず…おれに任せろ。
アルコの力が必要な時は、呼ぶ」
『ローには、どうすることもできない。アルコの力が必要になるから』
アイビーは、確か続けてそう言った。
どういう意味だ。
しかし、アイツがそう言うならそうなんだろう。ならば それまでに、出来るだけアルコを休ませておかなければ。
ローはアルコの素肌の背中に触りたい気持ちを抑えて、背を向けて服を着る様子を、何もせずにただ黙ってみていた。
*
「雨、止んだみたい」
船首側で腹這いに横になり、肘をついて双眼鏡を覗いていたアルコが、そのままの姿勢で振り返りローに言った。
ワニの外の海面が明るくなっている。
ずいぶん進んだのだろう。
「…ッ!!」
「うわっ?!」
ブンッ・・・!!!
・・ブンッ・・!!
・ブンッ・・・!!!
激しい横風が吹き荒れる。
頭上のワニの屋根がブンブンと揺られ、日なたと影が目まぐるしく訪れた。
ワニが左右に首を振っているらしい。
「ワニ…、雨を探してるのかも。雨に当たりたいんだね」
「ああ…、もう限界だ。出るぞ」
「どうやってっ?! 漕ぐ? いいの?」
「…いや、つかまってろ。
“ROOM”──────」
特大の“ROOM”を円型に広げながら、ローは落ちていた釘を水平に遠投した。
「──────“シャンブルズ”」