第25章 high sensitivity
ひとりきりになった森の小道で、ローは音色のする方向に、再び気を向けた。
姿は見えないが わかる
音色から感じる気迫のようなもので わかる
アルコは きっと今、例の『トランス状態』で演奏をしている
近くて遠い“女”
こうなったら 触れられない
いや、触れることは許されない
“神”のような存在
再び『教会』の“女”の像が思い起こされた
「ごめんね、ロー。アルコを連れていくつもりは、なかったよ」
隣に置いていた『クウトリワ』の木片に、アイビーが ちょこんと座っていた。
足をブラブラさせて、思い詰めたような表情で下を向いたまま。
返事をしないローに構わず、アイビーは続けた。
「ロー…。怒ってるんだ」
「だって…、ずっと誰にも気づいてもらえなかったんだ。じいさんにも、お母さんにも」
「10年以上も………ずっとだよ」
「アルコと…ローだけが、ぼくに気づいてくれたんだ」
「二人が、ぼくの名前と……もう死んでるってことを、思い出させてくれたんだ」
「だから、特別なんだよ」
時折、涙が混じったような震えた声になっていたが、ローはどれに対しても、何も返事をしなかった。
「ぼくは、アルコが好きなんだ」
「…あきらめろ」
さすがに無視できないアイビーの言葉に、ローは ようやく言葉を返した。
『あきらめろ』
それは 子供にとっては、
もうこの世から取り残された存在となった者にとっては、
非常に残酷な言葉だった。
しかし、もう子供とは思わない
“男”として
こんなところで
こんなにやすやすと
失う訳にはいかない
そのためには
『認め』よう
お前には
『アルコへの気持ち』を
「おれも だ。だから……あきらめろ」