第25章 high sensitivity
「『“神”じゃない自分にできること』…か。本当に不思議な人ですね。アルコさんは」
ディンが土手の上を見つめたまま、つぶやいた。
小道を挟んで反対側にいるディンからは、アルコの演奏している姿がみえるのだろうか。ローはそれを羨ましく思った。
「ローさんは、ぼくたち“D”が ある土地で何て呼ばれているかご存知ですか?」
「知っている。
──── おれも“D”だ」
ディンはそれを聞いて、眼鏡の奥の瞳を見開いた後、静かに目を伏せて笑った。
『“神”の天敵』
“D”である二人の心に刻まれているこの言葉
“神”が何を意味するのか
その“天敵”とは
二人はそれぞれの旅において、“神”を感じる度にそのことを意識していた。その意識を共有できる相手に出会ったのは、お互いにとって初めてだった。
「──── やっぱり。そんな気がしました。
だから協力したんです。あなた達 二人には…とくにローさんには『そうさせる何か』があると思った」
ローは石の上に寝転んだまま、ディンを見た。
『そうさせる何か』
お前はそう言うが
アイツほどじゃないだろう
ローの中に“麦わら帽子のD”が浮かんだ。
『麦わら屋とは
いずれは敵だが
悪縁も縁
こんな所で死なれても
つまらねェ
そいつをここから逃がす
一旦おれに預けろ』
“麦わら屋”とも、いずれどこかで会えば敵同士
しかし
アイツには『そうさせる何か』があった
“D”には『そうさせる何か』があるとでも言うのか
立場や状況や
年齢や性別すら関係ない
“一族の目的”のような『何か』が
お前もそうしたと言うのか
お前が海軍で
おれが七武海とはいえ
海賊であるということも関係なく
そうしたとでも言うのか
ディン……、いや“D・ウィン”
ローは寝転ぶのをやめて石の上に座り直し、帽子を脱いだ。
「助かったよ…ウィン。
お前と今、ココで出会えてよかった」
「こちらこそ。
ローさんの航海と旅の無事を祈っています」
竪琴の音色に誘われて、お互いの素直なねぎらいの言葉を口にした二人は、胸に熱いものが込み上げてくるのを感じていた。
ディンは目元を袖でごしごしと こすってから立ちあがり、研究のために花を少し採集する、と言い 荷物から小瓶を出して花畑に慎重に近づいていった。