第25章 high sensitivity
「私は“神”じゃないから、あの子達に何かできるとは思わないけど…
“神”じゃない、私にできることを」
土手の上からそう呟いているのが聞こえてから、しばらくして竪琴の音色が響き始めた。
ゆったりとした2拍子
静かな
ローが今まで聴いたアルコの演奏する曲の中で一番 静かな曲だった
1拍目は低音をひとつ
置くように
2拍目は幾重にも重ねた和音
重厚に広がるように
その繰り返し
前の音の余韻も長く残り、次々と音が重なっていく
ローは故郷の『教会』を思い出した
“神”の恵みや教えを説き、祈ることで“神”と対話するとされる『教会』の雰囲気
讃美歌、鎮魂歌
部屋全体に割れるほどに響き渡り、重なるパイプオルガンの音
その『荘厳さ』が一瞬にして目の前に広がった
ふと思い出したのは、故郷の『教会』の祭壇の正面に飾られていた石膏像
女と天使が一体化されて型どられたものだった
“女”と“天使” ────
政府によって
いや、“人間”によって一瞬にして焼け落ち、様変わりした教会
『あの日』
おれはあの教会で
焼け焦げて崩れた石膏像をみた
ススだらけの汚れて崩れかけた あの“女”の像を ────