第25章 high sensitivity
「やったね」
着地したローは、剣を納めた笑顔のアルコに迎えられた。
「…たいした 女だ」
ローのその言葉に、アルコは笑顔の種類を変化させた。充実感のある笑顔から、意味深なものへ。
「『その言葉』………、出会った時にも言われたわ。覚えてる?」
「あぁ…」
ローは思い出せずに曖昧な返事をした。
『たいした 女だ』
思い出せないのは、忘れたからではない。そう思ったことが、幾度となくあり過ぎて、どの場面だったかが思い出せなかった。
奴隷として売られたのに気丈さを保っていた時。初めて剣を振るう姿をみた時。演奏を聴いた時。“麦わら”を目覚めさせた時。セックスをした時…。
いつも おれの予想を、軽く超えてくる。
『たいした 女』────
「覚えてないんでしょ」
「そうじゃねェよ」
「ホントにぃ~?」
ローの目の前に出した人差し指を捕まえられて、振りほどこうとするが離れない。ふざけ合う二人の元に、大きな立方体の木片を抱えたディンが歩み寄る。
「ローさん、アルコさん! やりましたねっ! お、重いっ……」
「あ、大丈夫? ロー、取ってきて」
「あぁ…、
いや、待て。“重い”のか?」
「“重い”ですねぇ、予想以上に……
って、アレっ?!!」
「ど、どしたの? “重い”とマズいの?」
「マズいっていうか…、ソレ浮くのか?」
「あ…」
沈黙の後、木片をその場に置いて食い入るように観察し始めるディンは、少し青ざめてから結論づけた。
「コレは『イナカウ』の木でした…」
「つまり?」
「“浮かない”です」
「………」
すみませんすみません、と大げさに頭を下げるディンに、アルコは恐縮してなだめる。
「ディンでも間違えるくらい見分けが難しいんだね」とか「また技の練習できるから、逆にありがたい」とか声をかけるとディンはようやく謝罪をやめ、気を取り直した三人はまた『クウトリワ』の木を探して再び森を歩き始めた。