第25章 high sensitivity
ディンを先頭に“聖なる森”を進む。
森に続く小道は、いたって普通の林道で とくに神聖さを感じられるものではなかった。
枝に絡む蔦(つた)を見上げると、リスの仲間のような小動物が楽しげな声をあげて木を駆け登っていくのがみえる。
足元はふかふかとしている。落葉した木の葉が、豊かな土壌を作っているのだろう。
“聖なる森”としてヒトの立ち入りが制限されているからこそ、このような豊かな風景が守られているのかもしれない。
「昔は、この森にも自由に入れたんだ」
アイビーのつぶやきはディンには聞こえないので、アルコは通訳のように言い直した。
「昔は、この森にも自由に入れたの?」
「…そうです。よくご存知ですね。20年程前に、ある事故があってからここは閉鎖されました。そもそも、ここには守るべき希少な動植物が多いですから、もっと早くに調査して保護すべきだったんです…」
アイビーとディンは、二人とも悔しそうな顔をしていた。
*
しばらくすると、一帯には高い木々がないポッコリと開けた場所に出た。
一面には藍色の花。
その美しさに全員が足を止め、息を飲んだ。
「ここは………、ダメですよ」
「わかってる……」
踏む込むことを制するような言い方をするディン。
アルコは青く波打つ花畑に目を向けたまま言った。
「シルバーさんの家の図鑑でみたよ。オダマキの一種、“聖なる花”でしょ」
「神聖なだけじゃないんです…」
濃い藍色の尖った花びらの中に、薄い青色のもうひとつの丸い花びらを納めたその花は、不気味な程に群生していた。
「猛毒です」
「猛毒だよ」
同時に言ったディンとアイビー。先ほどの悔しさの原因は、まるで この花にあるようだった。